壁に優しいHTC Viveのセットアップ (+メイキングもあるよ)
ベースステーションが落ちてくる!
(記事の最後の方にDMM.makeのリンクがあるので欲しい人はそこから買ってください)
半月ほど前にHTC Vive買いました。Oculus Touchが発売されてない現状、Viveは普通に買える最もハイエンドなVRデバイスなわけですが、コントローラーやHMDをトラッキングするのにベースステーション(300gぐらい)を天井近くに取り付ける必要があります。
問題は方法で、壁にネジ止めするための器具が付属するのですが、賃貸住宅に住んでると穴を開けるのはちょっと…という人も多いと思います(私もそうです)。たまたまタンスとか置いてあればいいものの、そうでない場合2m近いポール+クランプ(しかも2個ずつ)を買って取り付けるというのは結構大掛かりで見た目も悪いです。
ところで世の中には剥がせる両面テープというのがあって、私の家では電子機器の配線だけでなく、電源タップやACアダプター自体も壁に貼り付けています。結構強度も高く、1年ぐらい経っても剥がせるのを確認済みです。

3M コマンド タブ(はがせる両面粘着) お買い得パック M 60枚 CMR3-60
- 出版社/メーカー: 3M(スリーエム)
- メディア: オフィス用品
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付属の固定具の裏に貼ってみたのですが、接地面積が小さい+重心が壁から遠いで明らかに失敗フラグが立っていたので、ベースステーションを支えるスポンジと、バックアップ用のフックを着けていたのですが、2日ぐらいで落ちてきました。
とはいえシールの強力さを考えると、上手く接地面積さえ稼げれば外れないはずだし、これはもう作るしかない!ということで作りました。
つくりかた
必要なのが何か考えてみると:
- ベースステーションを固定できること
- ネジ止め無しで固定したい (爪が曲がってカチッとなる感じのやつ)
- トラッキング範囲が広くなるように傾けたい
- 貼付け後もケーブルとボタンにアクセスできること
- シールが使いやすい感じで壁・天井と接すること
- 3面で接してほしい
- 他の人に配布できること (必須ではないけどせっかくなので)
あたりを満たすために、DMM.makeで3Dプリントすることにしました。
Tilt Brushでスケッチ
3Dで物を作るときは、2次元の図面だけで考えてると(少なくとも私の頭では)必ず見落としが出るので、VR環境を活かしてTilt Brushでスケッチしていきます。大きさと位置関係が直感的に分かるのはかなりいいです。
↑壁との接触面を考えてる様子
↑ケーブルの取り回しとスナップフィット(カチッとなるやつ)でかかる力を考えてる様子
これでだいたいの目処がついたので、CADでモデルを起こしていきます。
Fusion 360でモデリング
昔にDesignSpark Mechanicalは使ったことがあったのですが、もうちょっと強力そうなCADを探していたら、ちょうどFusion 360が無料で1年使える・なんかUIが良さそう(小並感)らしいので使ってみることにしました。
まず、ベースステーションの実物をノギスで測って地道にモデリングします。実際かなり地味な作業で、測って入力しようとすると「あれ、どの辺の長さだったっけ?」と忘れてしまって測りなおしたりするのが頻発した+CADに慣れてなかったので数時間かかりました。(ノギスから自動でAR上のモデルに制約が反映とかされて欲しい)
(ちなみに作業履歴は自動で保存されててて、こういうアニメーションを再生するモードがある)
一番難しそうなのはベースステーションを保持する部分なので、さっき作ったモデルを押し出して枠を作っていきます。それっぽい形を作るのは簡単ですが、実際にちゃんと動くかどうかは別です。たとえば、スナップフィットが硬すぎて入らないとか、枠がふにゃふにゃとか、いろいろな失敗例が考えられます。
Fusion360にはFEMで歪をシミュレートする機能があって、適当にボタンを押だけで1分ほどで↓みたいな結果が見れるので、歪みがいい感じなるように梁を足したり厚みを変えたりして調整しました。
そのあと壁に接する部分を作って(最初のバージョンが)完成!レンダリングも完全に透過的にローカルレンダリングとクラウドレンダリングが切り替えれたり、web UIにいつの間にか綺麗なサムネイルが生成されたりします。この調子でマルチドメインなシミュレーションとか、冒頭で言ったようなAR対応とかがあると未来って感じがします。
DMM.make
最初はABSライクで作る予定だったのですが、見積もりが4万円ぐらいしたので一番安いナイロンに変更(それでも1万円ぐらいかかる)しました。今回の形状は空白が多いので、DMM.makeの価格モデルでいうところの空間費が高く付いてます。
エクスプレスサービスで数日待つと…
かなり丁寧に梱包されてきました。早速試してみると、なんと一発で動きました。スナップフィットが初設計で動いたのはシミュレーションのおかげだし、ケーブル取り回しの問題が起きなかったのはVR内でスケッチしたおかげ(多分)だし、今時の文明の恩恵を感じます。
HTC Viveベースステーションホルダー スナップフィット (音がいい感じ)
DMM.make購入リンク & まとめ
買うもの
ベースステーション一個あたりシール三枚必要ですが、貼り付けに失敗する可能性もあるので、多めに買っておいたほうがいいと思います(安いですし)。
本体は
2個セット: 14,800円 (7,400円/個)
1個だけバージョン: 10,800円
Viveベースステーション固定具(v1.0) 1個 - DMM.make クリエイターズマーケット
何百円かづつ利益乗せてますが*1、なんだかんだで設計に10時間以上かかってるのと、試作で1個余分に買ってるのでその分ぐらいは儲けたいです。
使い方
こんな感じでシール3枚貼って部屋の隅に押し付けるだけですが、雑に貼ると落ちて来るので(実際一回落ちた *2 )、オススメな手順は:
- シールを貼る (ベースステーションはまだはめ込まない)
- 壁面の保護シートは剥がさずに、位置決めしてみる
- 壁面のシートを剥がして、決めた位置に押し付ける
- 特に天井は念入りに押し付けると良いです
- 接触が悪いと感じたら、剥がして新しいシールでやり直すほうがいいです
- 電源ケーブルを後ろの穴から通して、ベースステーションをはめ込む
(←:隅に3面で固定する例 →:L字型に2面で固定する例)
これで1週間程度使っていますが、落ちて来る気配は無いです。
免責事項
お約束ですが、もしこれを使ってベースステーションが落ちて壊れたり怪我をしても、私は一切の責任を負いません。あと、完全に非公式の物なので、HTCにゴネたりするのもやめてください。(とはいえ、落ちたら写真付きで知らせてもらえると嬉しいです。注意書きを追加するか、モデルを修正するか、公開停止するかのいずれかで対応するので。)
最後に
壁にネジ止めして退去時に原状回復費払うほうが安い可能性が微レ存